『범죄와의 전쟁: 나쁜놈들 전성시대(悪いやつら)』(2011)、『베를린(ベルリンファイル)』(2012)といった作品で韓国を代表する俳優として頭角を現し、近年も『1947 보스톤(ボストン1947)』(2023)や『비공식작전(ランサム 非公式作戦)』(2023)など、多彩なジャンルの作品で自由自在な演技を見せている하정우(ハ・ジョンウ)。『더 테러 라이브(テロ,ライブ)』は、そんな彼がシナリオを一読して出演を決めた、スリリングな展開が見どころの作品だ。
生放送のスタジオにかかってきた1本の電話から始まるサスペンス

漢江が一望できる高層ビルにあるスタジオで、ラジオ番組の生放送を始めたアナウンサー、윤영화(ユン・ヨンファ)の元に建設作業員と自称する男から電話がかかる。
放送とは関係のない話を続ける彼にいら立ったヨンファが会話を終わらせようとすると、男はスタジオの目の前にある마포대교(麻浦大橋)の爆破を予告。
数秒後、橋は本当に爆破され、肉眼でそれを確認したヨンファは、男との電話を“生中継”しようと考える。
スタジオという限られた空間を舞台に、“顔の見えない”犯人と彼の電話を受けたキャスター、さらには視聴率至上主義の放送局幹部や保身に走る政府関係者を巻き込んだ駆け引きが、映画の尺とほぼ同じ98分の中でスピーディーに描かれていく。
監督である김병우(キム・ビョンウ)が手掛けた脚本は多くの観客を魅了し、25年2月には阿部寛主演のリメイク作『ショウタイムセブン』が日本でも公開された。
巧みな演技を見せるハ・ジョンウに注目

ハ・ジョンウが演じているのは、局を代表するニュースキャスターの座を、ある不祥事が原因で追われた男。
「犯人は誰なのか?」「その目的は?」といった数々の疑問が明かされていく中で、華やかな座に返り咲くことを最大の目的としてきた傲慢な彼の心情が、少しずつ変化していくのが面白い。
真面目に話していてもユーモアを感じさせることのできるハ・ジョンウの巧みな演技がキャラクターに人間味を与えている。
そんな彼と取引をしながら高視聴率を上げることにこだわる放送局幹部役を『ベルリンファイル』でもハ・ジョンウと共演していた이경영(イ・ギョンヨン)、警察の対テロセンター主任役を『헌트(ハント)』(2022)の전혜진(チョン・ヘジン)が演じている。

現実と重なる苛烈な報道合戦

少しでも早く“おいしい”映像を流すことを人命よりも優先させようとするマスコミ、政府の理不尽な対応に怒りを覚えても反論する手段がない庶民、責任を取ることからひたすら逃げようとする政府といった構図は、世界共通。
韓国では13年夏に公開されたが、翌年4月に起きたセウォル号沈没事故後のすさまじいばかりの報道合戦を予告しているような印象も与える。
また、橋が破壊される映像は1994年に起きた성수대교(聖水大橋)崩壊事故の記憶とも重なる。

公開:(韓国)2013年7月31日、(日本)2014年8月30日
監督:キム・ビョンウ
出演:하정우(ハ・ジョンウ)、이경영(イ・ギョンヨン)、전혜진(チョン・ヘジン)、이다윗(イ・デビッド)
配信:Netflix、Amazonプライム・ビデオ、U-NEXTほか
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