“持てる者”と“持たざる者”との格差が世界的に広がるばかりの昨今。韓国でも国を動かす政治家や彼らを支える公務員、大企業などの“기득권층（既得権層）”の不正を取り上げた映画が次々と作られてきた。
『내부자들（インサイダーズ／内部者たち）』は大ヒット作『베테랑（ベテラン）』（2015）の“18禁バージョン”といった趣の作品で、大企業、政治家、マスコミの癒着の実態を生々しく描き出していく。
既得権層の不正を暴こうとする男たち
政財界の有力者を陰で結び付け、ペンの力で大衆を動かす保守系新聞『祖国日報』の論説主幹이강희（イ・ガンヒ）。
彼の手足となって危険な仕事を請け負ってきた裏社会の男안상구（アン・サング）は、未来自動車の裏金に関するファイルを手に入れたことをきっかけに手ひどい制裁を受けて以降、息を潜めて暮らしていた。
一方、大統領の座を狙う政治家장필우（チャン・ピル）と彼に資金援助する未来自動車の오（オ）会長との密接な関係を暴いて出世を狙う検事우장훈（ウ・ジャンフン）は、裏事情に詳しいサングと手を組もうとするのだが……。
人気ウェブ漫画家の作品を大胆に映画化
原作を手掛けたのは、映画『이끼（黒く濁る村）』（2010）やドラマ「미생（ミセン-未生-）」（2014）など、作品が続々と映像化されているウェブ漫画家윤태호（ユン・テホ）。
우민호（ウ・ミノ）監督は原作のエネルギーとリアリティーに圧倒されて映画化を決めたとのことだが、漫画の方は連載が中断され未完だったため、新たに検事役を創作し、驚きのラストに向かって進むオリジナルのストーリーを作り上げた。
政治家と企業、検察、ヤクザの深い関係についてはこれまでもさまざまな作品で取り上げられてきたが、“既得権層”の中にマスコミまでを含めているのが新鮮だ。
アクの強い役柄をイ・ビョンホンが好演
血縁にも学縁にも恵まれない野心家の検事ウ・ジャンフン役にドラマ「비밀의 슾（秘密の森）」シリーズの조승우（チョ・スンウ）、静かに復讐の時を待つヤクザ、アン・サング役に이병헌（イ・ビョンホン）という、タイプの違う演技派が起用され、一筋縄ではいかない駆け引きを披露。
長髪姿で전라도（全羅道）方言を駆使するアクの強い役柄を生き生きと見せたイ・ビョンホンは青龍賞、大鐘賞、百想芸術大賞などの主演男優賞を受賞しただけでなく、アドリブで口にしたという「모히또에 가서 몰디브나 마실까요?（“モヒート”へ行って“モルディブ”でも一杯やりましょうか？）」というせりふが流行語にもなった。
また、黒幕イ・ガンヒ役の백윤식（ペク・ユンシク）も別格の存在感を見せている。
原題：내부자들
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邦題：インサイダーズ／内部者たち
公開：（韓国）2015年11月19日／（日本）2016年3月11日
監督：ウ・ミノ
出演： イ・ビョンホン、チョ・スンウ、ペク・ユンシク、이경영（イ・ギョンヨン）他
配信：Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT、FOD他
※最新の配信状況は各サービスにてご確認ください
この記事が掲載されている書籍
定価：1518円（本体1380円＋税10％）
