※本記事は雑誌『韓国語学習ジャーナル hana』連載「Stage」掲載時の内容を転載したものです。掲載当時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる場合があります。

今回皆さんにご紹介する作品は판소리뮤지컬 (パンソリミュージカル)、「적벽 」です。
판소리 は伝統芸能であり、一人の歌い手が物語性のある歌を歌いますが、「赤壁」では通常のミュージカル公演のように、何人かで演じます。歌だけではなく、踊りや動きもあるので、耳で楽しむだけではなく目でも楽しめる構成になっています。
「赤壁」はパンソリの中の一曲「적벽가(赤壁歌)」を元に作られました。삼국지 (三国志)が好きな方は「赤壁」というタイトルを見ただけで、赤壁の戦いを思い浮かべるかもしれません。「赤壁」はそんな赤壁の戦いをモチーフに、英雄たちの物語だけではなく、当時の庶民の心境を描いた作品です。
また、「赤壁」は、難しいというイメージがある伝統芸能を分かりやすく表現しています。本来一人で歌うパンソリに対し、「赤壁」は何人もの歌い手によって演じ分けられ、パンソリの特徴の一つでもあった부채 (扇子)を使った振り付けは、時には弓になったり、時には剣になったりと、見る者の想像をかき立てます。
また、男性役を女性が演じることもあります。パンソリの歌い手が一人で男女どちらも演じることを考えれば、必然の演出とも言えるでしょう。日本の歌舞伎でも女性の役を男性の方が演じたり、シェークスピア時代も男性が女性役を演じたりしたので、これは舞台ならではの魅力ですよね。
休憩のない100分間、俳優は休むことなく動き続けます。
特にアンサンブルは絶え間なく早着替え、扇子を取り替えるなどして登場するので、ずっと走り続けているように思います。舞台装置が変わるのではなく、演じる者の動きと소리 (音)だけで場面を表現する舞台は迫力があり、役者の熱気がそのままステージから客席に伝わってきます。
パンソリで使われる言葉が聞き取りにくいこともありますが、舞台の両脇には英語と韓国語の字幕もあるので、聞き取れない言葉は横見をしながら鑑賞することができます。
伝統の美しさを表現しながら現代的な良さも取り入れている公演なので、韓国の伝統公演を一度も見たことのない方でも楽しめると思います。
また、この公演を見終わった後は、一人の歌い手が何時間も歌って語る本来の판소리公演も見たくなると思います。
視覚的な情報が多い大型ミュージカルに比べるとシンプルな舞台ですが、その中に余白の美があり、見る者の想像力を刺激する美しい公演です。
【公演期間】〜2019年5月12日
【場所】정동극장(貞洞劇場)


