教保文庫の6月のエッセイ月間ベスト10と注目の新刊情報をご紹介します。コメディアン、キム・テギュンの人生エッセイが5位に、日本からも数多くの観光客が訪れる韓国のベーカリーを手掛けたRYOのエッセイが8位にランクインしました。注目の近刊では、『誰でもない』や『ディディの傘』など邦訳書も数多く出版されているファン・ジョンウンによる、「戒厳令のその後」について書かれたエッセイを取り上げています。
※ランキング記事ではハングルのルビを省略します。
記事の目次
- 教保文庫ベストセラー月間ベスト10(韓国語のエッセイ)
- 1位:『단 한 번의 삶(たった一度の人生)』
- 2位:『우리의 낙원에서 만나자(僕たちの楽園で会おう)』
- 3位:『혹시, 돈 얘기해도 될까요?(あのう、お金の話をしてもいいですか?)』
- 4位:『어른의 행복은 조용하다(大人の幸せは静かだ)』
- 5位:『같이 밥 먹고 싶은 아저씨 되는 법(一緒にご飯を食べたいおじさんになる方法)』
- 6位:『빛과 실(光と糸)』
- 7位:『행복할 거야 이래도 되나 싶을 정도로(幸せになれるはず、不安になるほどに)』
- 8位:『료의 생각 없는 생각(RYOの考えのない考え)』
- 9位:『오역하는 말들(誤訳する言葉たち)』
- 10位:『행복한 철학자(幸せな哲学者)』(改訂増補版)
- 注目の新刊
教保文庫ベストセラー月間ベスト10(韓国語のエッセイ)
1位:『단 한 번의 삶(たった一度の人生)』
김영하(キム・ヨンハ)著/복복서가(ボクボクソガ)刊/2025.04.06

김영하
2位:『우리의 낙원에서 만나자(僕たちの楽園で会おう)』
하태완 (ハ・テワン)著/북로망스(ブックロマンス)刊/2025.05.21

하태완
3位:『혹시, 돈 얘기해도 될까요?(あのう、お金の話をしてもいいですか?)』
주언규(チュ・オンギュ)著/필름(Feelm)刊/2025.05.28

주언규
「経済ユーチューバー」として知られる著者が、自身の経験をもとに綴った「成功とお金」にまつわるエッセイです。成功のカギは、才能ではなく「長く続ける誠実さ」にあること、また、自分の強みを見極め、それを活かして勝負することの重要性などを説いています。シビアながらも実践的なアドバイスが詰まった一冊です。
4位:『어른의 행복은 조용하다(大人の幸せは静かだ)』
태수(テス)著/페이지2북스(ページ2ブックス)刊/2024.11.4

태수
5位:『같이 밥 먹고 싶은 아저씨 되는 법(一緒にご飯を食べたいおじさんになる方法)』
김태균(キム・テギュン) 著/몽스북 (モンスブック)刊/2025.06.18

김태균
コメディアンでありながら歌手活動やラジオのDJなどもこなす多才なタレント、キム・テギュン。本書では、お金や仕事、愛、夫婦喧嘩に至るまで、この間彼が経験してきた大小さまざまなことが語られています。タイトルには、そこで得た気づきを若い世代と分かち合うことで「一緒にご飯を食べたいおじさん」になれるのではないかという思いが込められています。俳優のパク・ボヨン、歌手のユナも推薦しています。
6位:『빛과 실(光と糸)』
한강(ハン・ガン)著/문학과지성사(文学と知性社)刊/2025.04.18

한강
7位:『행복할 거야 이래도 되나 싶을 정도로(幸せになれるはず、不安になるほどに)』
일홍(イルホン)著/부크럼(ブックラム)刊/2024.7.29

일홍
8位:『료의 생각 없는 생각(RYOの考えのない考え)』
료(RYO)著/열림원(ヨルリムウォン)刊/2025.06.16

료
ソウルの江南にある人気のベーカリー「ロンドン・ベーグル・ミュージアム」やカフェ「ハイウエスト」などを手掛け、韓国だけでなく海外からも注目を集めるRYO。本書にたびたび登場する「美しさ」という言葉には、「ただ、世界の美しさを余すところなくすくい上げる、美しさの狩人として生きたい」という思いが込められています。数々の「パンの名所」を生み出してきたRYOの感性に触れることができるエッセイです。
9位:『오역하는 말들(誤訳する言葉たち)』
황석희(ファン・ソッキ)著/북다(ブッタ)刊/2025.05.30

황석희
ドラマ『パチンコ』や映画『デッドプール』『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』、ミュージカル『ヘイディズタウン』など、数多くの作品の翻訳を手掛けてきた著者は、翻訳家の視点から、「同じ言語を話していても、本当の意味で互いの言葉を理解しているのだろうか」という疑問を提起します。人の話や自分の心の声を「誤訳」しないよう、言葉や日常を丁寧に見つめるエッセイです。また、『パチンコ』や『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を翻訳した際の裏話なども語られています。
10位:『행복한 철학자(幸せな哲学者)』(改訂増補版)
우애령(ウ・エリョン)著、엄유진(オム・ユジン)絵 /하늘재(ハヌルジェ)刊/2023.11.15

우애령,엄유진
小説家である著者が、哲学者の夫のユニークな日常を見つめながら人生について綴ったエッセイです。2人の娘であるオム・ユジンによる絵や四コマ漫画が追加された改訂増補版として出版されました。マンションでアヒルを飼う哲学者と、そんな彼をユーモラスな比喩で表現する小説家の日常は、風変わりでありながらも人間への愛に満ち溢れています。また、国民的作家のパク・ワンソも本書について「人の心を、こんなにも心地よく、面白く、愛情をもって、やさしく広げて見せてくれるなんて、その巧みさには驚かされる」と評しています。
注目の新刊
『작은 일기(小さな日記)』
황정은(ファン・ジョンウン)著/창비(チャンビ)刊/2025.07.11

황정은
『誰でもない』(斎藤真理子訳/河出書房新社)や『ディディの傘』(斎藤真理子訳/亜紀書房)など多くの作品で知られる著者による4年ぶりのエッセイ集です。本作の舞台は、現職大統領による戒厳令の発令という未曾有の事態の「その後」。誰もが言葉を失い、動揺していた時期に、日々の暮らしや広場での出来事を日記という形で記録しました。あの時を耐え抜いた人々の怒りや不安、沈黙、緊張感、さらには連帯、変化、可能性を、作家の感覚を通して追体験できる貴重な一冊です。(文/金知子)
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