『내 이름은 김삼순(私の名前はキム・サムスン)』、『시크릿가든(シークレット・ガーデン』、『사랑의 불시착(愛の不時着)』と、各時代を代表する大ヒットドラマに出演し、日本でも多くのファンを持つ俳優현빈(ヒョンビン)。
映画でも活躍してきた彼が、韓国の歴史に名を残す人物を演じているのが最新作の『ハルビン』だ。

アン・ジュングンはなぜ、銃を手にしたのか?

祖国独立のため、活動を続けてきた大韓義軍。1908年、参謀中将안중근(アン・ジュングン/安重根)率いる部隊は함경북도 신아산(咸鏡北道新阿山)の戦いで日本軍に勝利するが、捕虜たちを解放すると主張する彼に対し、同志이창섭(イ・チャンソプ)らが反発する。
彼らと決裂後、日本軍の急襲によって部下たちを失ったアン・ジュングンはロシアのクラスキノにある隠れ家に戻り、次なる作戦に加わろうとする。
日清、日露戦争に勝利し、1905年11月には大韓帝国を「保護国」とする第2次日韓協約(乙巳条約、日韓保護条約とも呼ばれる)を強制的に締結した日本。
大韓帝国内外では、この動きにあらがう義兵活動が活発化し、黄海道の裕福な家に生まれたアン・ジュングンも、故郷を離れて大韓義軍の一員となった。
今作は、戦闘中に万国公法に従って捕虜を解放したことで同志たちから不審の目を向けられた彼が、韓国統監府の初代統監を務めた明治政府の重鎮・伊藤博文に銃を向けるまでを、感情を極力抑えた静かなタッチで描く。

ウ・ミンホ監督が史実をストイックに映像化

監督は、韓国社会の裏側を生々しく見せた『내부자들(インサイダーズ/内部者たち)』(15)で成功を収め、20年には박정희(パク・チョンヒ/朴正煕)大統領暗殺にかかわった人物たちに迫った『남산의 부장들(KCIA 南山の部長たち)』を発表した우민호(ウ・ミンホ)。
3本それぞれ違った時代を背景としているが、男たちの人間関係と心理を追いながら「彼らはなぜその行動に至ったか?」という問いを観客に投げかける点が共通している。
今作については、韓国公開前に行われたインタビューで「祖国を失くした人々が集った大韓義軍の精神を娯楽映画として消費させたくなかった」とコメント。
そのストイックな態度が撮影、美術、音楽など、各パートの隅々にまで感じられる。

ヒョンビンに加え、日本からリリー・フランキーも出演
主人公のモデルとなったアン・ジュングンは、韓国では知らない人のいないほど有名で、ソウルの南山公園内に安重根義士記念館も建てられている独立運動家。
22年には彼を主人公にした大ヒットミュージカル『영응(英雄)』の映画版も製作された。今作ではヒョンビンが、寡黙でありながらも、強靭な意思を持つ人物として力強く演じている。
特に、モンゴルで撮影された、凍りついた湖の上を歩く姿は、過酷で孤独な彼の人生を象徴する名シーンとなった。

そのほか、彼の同志役で『밀수(密輸1970)』の박정민(パク・ジョンミン)、『インサイダーズ/内部者たち』をきっかけに注目された조우진(チョ・ウジン)、『킬러들의 쇼핑몰(殺し屋たちの店)』など、ドラマでも活躍の続く이동욱(イ・ドンウク)といった実力ある俳優たちが揃って出演。
さらに、『서울의 봄(ソウルの春)』(23)の정우성(チョン・ウソン)も特別出演している。

また、『万引き家族』(18)などで韓国でもよく知られているリリー・フランキーが、これまであまり見たことのない、クールな雰囲気の伊藤博文として登場する。

今年5月に発表された百想芸術大賞では、映画部門の作品賞に加え、撮影の홍경표(ホン・ギョンピョ)が大賞に選ばれた。
100年以上前に生きた人物が口にする言葉が、現代の韓国に向けたメッセージにも聞こえるラストが心に残る。
原題:허얼빈
邦題:ハルビン
韓国公開:2024年12月24日
日本公開:7月4日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
日本配給:配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
監督:ウ・ミンホ
出演:ヒョンビン、パク・ジョンミン、チョ・ウジン、イ・ドンウク