多彩なジャンルの作品が翻訳され、日本でも多くの読者を得ている韓国発の小説。
『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019)や『ケナは韓国が嫌いで』(2023)など、小説を原作とした映画も目立つ。
大学生活になじめなかったアウトサイダーたちの13年にわたる友情を見つめる『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』も、パク・サンヨンの小説『大都会の愛し方』を映像化した作品だ。
ドラマ版も作られた人気小説を映画化

ゲイであることを周囲に隠したまま、大学の仏文科に通い始めた흥수(フンス)。
歓楽街である男性とキスしているところを同級生재희(ジェヒ)に見られ、秘密があらわになってしまうのではと恐れるが、ジェヒは等身大のフンスを尊重。
自由奔放な行動で、同級生たちから異端視されていたジェヒとフンスは意気投合し、毎夜、クラブで踊り、酒を飲み歩く親友同士となる。そんなある日、一人暮らしのジェヒの家を怪しい男がのぞき見ていることが判明。
母親との生活に気づまりを感じていたフンスが、彼女の家に引越し、同居生活が始まる。

小説家でゲイである主人公が自分の身の回りの出来事を書いたという設定の短編小説を集めた『大都会の愛し方』に収録されている一編「ジェヒ」をもとに作られた本作。
이언희(イ・オニ)監督は、ふたりの友情やそれぞれの恋愛模様だけでなく、ジェヒの姿を通して、女性たちが大学や就職活動、職場で感じる様々な生きづらさも描き出している。
ちなみに韓国では、昨年10月から同じ小説をもとにした全8話のドラマ版も配信。
こちらは原作者の박상영(パク・サンヨン)が脚本を手掛け、『보통의 가족(満ち足りた家族)』(24)の허진호(ホ・ジノ)、『새해전야(ニューイヤー・ブルース)』(21)の홍지영(ホン・ジヨン)、『같은 속옷을 입는 두 여자(同じ下着を着るふたりの女)』(22)の김세인(キム・セイン)といった映画監督たちが演出を担当している。
キム・ゴウンが自由奔放な主人公を好演

映画で主人公ジェヒを演じているのは『파묘(破墓 パミョ)』(24)で数々の主演女優賞に選ばれた김고은(キム・ゴウン)。
他人の視線を気にせず、恋愛、酒、勉強、すべてに全力を注ぐ魅力的なキャラクターを彼女らしい愛らしさで見せている。

そんなジェヒの最高の相棒フンス役はアメリカのドラマ『Pachinko パチンコ』で注目された노상현(ノ・サンヒョン)。
自分自身を認めることができず、誰かを愛することにも臆病な青年を繊細に演じている。

ジェヒの歴代彼氏役で『개마을 차차차(海街チャチャチャ)』の이상이(イ・サンイ)、『눈물의 여왕(涙の女王)』の곽동연(クァク・ドンヨン)、『이상한 변호사 우영우(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌)』の주종혁(チュ・ジョンヒョク)らが登場するのも見ものだ。
心に残るセリフの数々

また、ゲイであることをアウティングされるのではと心配するフンスへの「네가 너인 게 어떻게 네 약점이 될 수 있어(あんたがあんたであることが弱みになんかならないよ)」や、会社の飲み会で「女性ひとりだと夜道が危ない」という同僚に怒りを交えて言い返す「남자들이 일찍일찍 다녀야 여자들이 밤에 안전하지 않겠어요?(男の人たちが早く帰るようになれば、女性が夜道を歩いても安全になるんじゃないですか?」など、ジェヒが口にするストレートで痛快なセリフも心に残る。
原題:대도시의 사랑법
邦題:ラブ・イン・ザ・ビッグシティ
公開:(韓国)2024年10月1日(日本)2025年6月13日(金)より全国ロードショー
配給:日活/KDDI
監督:イ・オニ
出演:キム・ゴウン、ノ・サンヒョン、イ・サンイ、クァク・ドンウォン