今回お話を伺ったのは、よしかわ語学院主宰であり韓国語講師の吉川寿子(よしかわ ひさこ)先生です。
記事の目次
吉川寿子先生推しの韓国語学習法
ズバリ、先生が推す学習法は——
💬 「訳す」から「感じる」へ。韓国語を“読む”楽しみ方です
「読む力」はすべてのスキルの土台
「語学力のベースって、読解だと思っています。単語や表現を知らなかったら、듣기(聞く)も 말하기(話す)も成立しません。」
吉川先生は、TOPIKの指導を通じて、「読解をベースに学んだ生徒のほうが、作文や聞き取りの点数も伸びる」と感じたそうです。
文章をたくさん読み、語彙を増やすことが、結果的にすべてのスキルの底上げにつながります。

『読解』という言葉は『難解』に似ていて、なんだか難しそうに聞こえますよね。でも実は、筆者との対話なんです。文章を通して『この人は何を伝えたいのか?』と感じ取ること。それが読解の本質です。
そうして読み進めるうちに、知らなかった表現や新しい知識に出会える。
使われている言葉が魅力的だったら嬉しくなりませんか? そんな“嬉しさ”こそが、読解を楽しむ原動力なんです。
読解がリスニング・スピーキングにも効く
読解力が上がると、リスニング力やスピーキング力も自然に伸びるといいます。
「単語や表現のインプットが読解の柱ですから、それが他の技能にも生きます。ただ、リスニングには発音変化の知識が、スピーキングには瞬発力や発音の正確さが求められるので、すぐに直結するわけではないんです。でも、読解で覚えた表現を少しずつ話す中に取り入れていくことで、発話の内容が豊かになります。」
読解レベルとスピーキングレベルは格差があって当然なのでそこを潔く受け止めて練習することが肝です。焦らないことが何より大切です。
“読解を楽しむ”ためのヒント
① 知らない表現を見つけたらノートにまとめる
知らない表現に出会ったら、自分専用のノートを作るのがおすすめ。紙でもアプリでも手軽に続けられるものがGOOD。
「辞書や文法書で使い方を調べ、例文を書き写してみてください。会話や作文等で積極的に使うように意識することが大切です。」
② 誰かと共有する
「相手がいると途中で挫折しにくいというのが最大のメリット。自分以外の視点から新しい気づきを得られることも多いです。」
SNSではなく、身近な学習仲間とのシェアがおすすめ。
③ 自分の興味ある分野を読む
「興味があるテーマだと、最後まで読み切れる。『読み切れた!』という経験が、自信とモチベーションにつながります。」

レベル別おすすめ教材
📖 初級者: 絵本やマンガ、対訳付きの読み物など、視覚的で内容がわかりやすいもの。
📖 中上級者:韓国のエッセイ集や月刊誌『좋은생각』。短い記事も多く、書かれている文章の質が高い。
📖 試験対策: TOPIKの過去問を和訳しながら読む練習。「本番では和訳はしませんが、練習で自分の理解の曖昧な部分を見つけるのにとても役立ちます。
※「和訳」とは、単語や文法を一文ずつ日本語に置き換えること。
吉川先生の読解勉強法
「これは読解の勉強だ」と意識して始めたわけではありません。
もともと語源や漢字語に興味があり、辞書を頼りに日本語と照らし合わせながら“言葉遊び”のように覚えていったことが、読解の助けになりました。
一方で、ハングル検定上級などの試験対策では、根気強い反復練習と日本語の語彙力アップも欠かせませんでした。
語彙を積み重ねながら、段落や接続詞を意識して文の流れや構造を捉えることで、自然と読解力が上がり、TOPIK作文のスコアも伸びていきました。
現在は、韓国語教育に関する資料を読んで韓国語でまとめる作業を続けるほか、毎月『좋은생각』を一冊読み切って内容を要約するのを習慣にしています。
また、聞いた話を要約してメモすることや、文芸作品に触れる時間を持つことで、講師として必要な読解力とスピードを保っています。

速く・正確に読むには
TOPIK読解で求められる「速く正確に読む」力。
「文法・語彙の基礎をしっかり固めたうえで、俯瞰して読む意識を持つことが大切です。まず“何について書かれているか”をざっくり把握し、段落の接続詞やキーワードを見て全体の流れをつかみましょう。量をこなしても点が伸びないときは、文法理解のあいまいさが原因のことが多いです。」
そして、理解を確かめる練習として「全文を和訳してみる」こともおすすめです。
一見遠回りに感じますが、実際に訳してみると自分の理解のあいまいな部分に気づけます。
TOPIK本番では、和訳していては間に合わず、韓国語を韓国語のまま理解して解く力が必要です。
しかし、練習の段階で一度全文を和訳してみると、自分の理解のあいまいな部分を確認でき、本番での正確かつ速い読解につながります。
「訳すだけ」で終わらせない
「一番もったいないのは、何も考えずに左から右に読んで、訳して終わる勉強法です。訳すこと自体は大切ですが、『この文章は何を伝えたいのか』を意識しないと、自分の中に残らないんです。」
読解が苦手な人へ
「読解が苦手」と感じる人は、文字から情報を拾うことに慣れていないだけ。
「読むスピードが遅い方は、単語力不足のことが多いです。単語を覚えるときは、ビジュアルや類語・反対語をセットにしたり、語源や漢字語を意識したりして、記憶を広げてください。」
そして何よりも、好きなジャンルの文章を読むこと。
「“読めた!”という成功体験が、読解への苦手意識を変えてくれます。」

最後に——話す力の裏には、読む力がある
語学の4技能の中で、注目されがちなのは“話す力”かもしれません。
「どんなに読み書きができても、話せなければ意味がない」と言われがちですが、決してそんなことはありません。
話す内容をより深く、豊かにするためには、地道な読解の学習が欠かせないからです。
「読解が苦手」と感じる方の多くは、文字だけで情報を理解することに少し苦手意識があるのだと思います。
読むスピードが遅い場合、その原因の多くは語彙力不足です。
単語や表現を覚えるときは、イメージや絵などのビジュアルを添える、類語や反対語とセットで覚える、語源や漢字語、品詞の変化に注目するなど、記憶を助ける工夫をするとよいでしょう。
また、自分の好きなジャンルの文章を読むことで、最後まで読み切る達成感が得られます。
この「読み切れた!」という経験が自信になり、読解力を育ててくれます。
読解の勉強を続けて、書き手からのメッセージを“楽しく受け取る”喜びを感じてみてくださいね。


私は読解が本当に苦手で、語彙力はある方だと思っているのに、どうしても読むのが遅いんです。
読解って「訳す」ことだと思っていましたが、先生の話を聞いて、“筆者との対話”なんだとハッとしました。
意味を取るだけで終わらず、「筆者は何を伝えたいのか?」を感じ取る――それこそが“読む力”なんですね。
知らない表現に出会ったときのワクワク感、気に入った表現をノートにメモする時間も、ぜんぶ「読解を楽しむ」ことにつながっているんだなと思いました!
講師プロフィール

吉川寿子(よしかわ ひさこ)
韓国語教室 よしかわ語学院主宰/韓国語講師/韓国語教育研究者