今回から始まる新連載「現場の先生に聞いてみた!先生が推す韓国語学習法」。
第1回目は、近畿大学や神戸女学院大学などで韓国語を教えられている 河昇彬(ハ・スンビン)先生 にお話を伺いました。
記事の目次
河昇彬先生推しの韓国語学習法
ズバリ、先生が推す学習法は——
💬 「韓国語日記です」

毎日、韓国語で日記を書かせています。1行でもいいので、続けることでみるみる力がついていきます。
マンネリ化しないよう、こちらからテーマを投げかけたりもしています。
今回は、この「韓国語日記」について、より詳しくお話をお話を伺いました!
日記にはどんな効果があるのですか?
河先生: 日記は「自分の話」なんですよ。教科書の内容は自分の話ではないので、ちょっと遠い感じがしますが、日記では自分の身の回りの単語を使うようになります。それがなによりも重要なんですね。
自分の話を表現するのに一番良いのが日記だと思います。
おまけに「時制」のトレーニングにもなります。日記なので基本は過去形が中心ですが、これからの予定なども書くので、未来形も使います。こうした時制の使い分けは、初中級の学習者には難しく感じられることが多いですが、繰り返すことで自然に身に付いていきます。
最初は「起きたこと」を書くだけでも十分ですが、だんだんと「自分の考え」を書くようになると、さらに表現力がアップしますよ。
入門から上級まで、どのレベルの生徒にも日記を書かせていますか?
河先生:僕の場合、文字と発音を覚えた後に、まずタイピングを教えます。そのあと、1行でも良いので日記を書かせるようにしています。もちろん手書きが理想ですが、今はタイピングが手書きより重要な時代にもなっていますからね。
最初は短くて良いんですよ。新しい文法を習ったら、その文法を使って改めて日記を書く、ということを繰り返すことが大切です。上級レベルになるまで続けている人は、みるみる上達して表現が豊かになっていきますよ。

具体的にどんなテーマを出していますか? いくつか例を教えてください。
河先生:初級レベルだと簡単な答えになるような質問をします。「昨日の朝の出来事」や「週末にしたこと」などになります。
ただ、学生の生活は意外と同じことが続きやすいので、中級以上になると少し変化をつけます。たとえば「昨日見た番組の感想」や「今週の授業でいちばん楽しかったこと」など。
上級になると時事問題にも挑戦してもらいます。「昨日見たニュースの感想」などですね。これがTOPIKの쓰기対策にもつながります。長文でなくても良く、長くても3行程度で十分です。
日記の添削はしていますか? フィードバックはどうしていますか?
河先生:基本的には、オンラインでタイピングしたものを提出してもらい、添削したものをオンライン上でフィードバックしています。
人数が少ない場合は、学生の日記からいくつかピックアップして読み上げ、そこで使われている文法や表現をみんなで学ぶようにもしています。ただ、すべて添削するのは難しいので、AIプログラムを活用して「韓国語の文法チェックをして、日本語で説明して」をさせるように勧めています。これなら僕がいなくてもすぐに確認できるので便利です。

実際に続けた生徒さんには、どんな変化や成長が見られましたか?
河先生:高校生でTOPIK2級を取得していた生徒たちに、6か月間、週1回3行ずつ日記を書かせたところ、全員がTOPIK3~4級に合格しました。
TOPIKⅡを初めて受ける方にとって쓰기は大きな壁ですが、日記を書く習慣のおかげで苦手意識がかなり薄れたようです。
やっぱり、毎日書かないと意味がないのでしょうか?
河先生:毎日、最低でも1行ずつでも書いてほしいとは思いますが、必ずしも毎日でなくても大丈夫です。スマホは常に持ち歩いていると思うので、思いついた時にスマホのカレンダーなどに、今目の前で起きたことをさっとメモするクセをつけると、より効果的だと思います。
日記以外にも、効果を感じた学習法があれば教えてください。
河先生:「自分の単語帳づくり」ですね。単語集や教科書に載っている単語も良いのですが、自分が普段使う単語を集めた単語帳を作るのが、会話力向上にもつながります。
①単語、②品詞、③意味(日本語)、④用例(自分で文章を書く)だけで十分なのでGoogle Sheetでもノートでも何でも構わないので、どんどん書きためてほしいです。自分がどんな単語を知らないか、どんな単語で間違いやすいかが分かるようになるので、とてもおすすめです。


最後に⋯⋯

今回お話を伺って、「1行でも続けることが大きな力になる」という言葉がとても心に残りました。
日々の積み重ねが自分の表現力につながっていく——そんな実感を持てる学習法ですね。私自身も、まずは気軽に1行から始めてみたくなりました。
次回も、現場の先生ならではの学びのヒントをお届けします。お楽しみに!

河昇彬(ハ・スンビン)
政治学博士/通訳士/韓国語講師