韓国語の外来語は、単語の形が日本語とは少し違うものが多く、難しいですね。その上、元の外国語がどういう発音だったかによって韓国語の方のつづりも決まるという場合があり、ややこしいことがあります。具体的にどのような場合かというと、 ㅐ とㅔの書き分けです。この二つは、今のソウルの話し言葉では区別が失われていますが、単語ごとに書き分ける必要があり、固有語や漢字語でも同音異綴語(音は同じだが、つづりが違う単語)が多いです。세다 (数える)と새다 (夜が明ける)、개시 (開始)と게시(掲示)などがありますね。

さて、外来語の場合、英語やフランス語など、元になる外国語の発音がまず先にあります。外国語は、韓国語とは発音が違いますから、受け入れるときに韓国語の音に変換しないといけません。
例えば、英語のbとvの音は、基本的にはどちらもㅂに変換して受け入れられます。つまり、英語で元々区別していたbとvは、韓国語では区別がなくなるわけです。こうした音の変換は、まだㅐ とㅔが違う発音だった頃から行われていました。そのため、 ㅐが担当する音と、 ㅔが担当する音には違いがあったのです。
英語には、fanに含まれる[æ]という音と、penに含まれる[e]という音があります。この二つは英語では違う音で、区別されています。これが日本語に入った場合、前者は「ファン」のように「あ」の音に変換され、後者は「ペン」のように「え」の音に変換されます。そのため、元々あった区別は日本語に入ったときも維持されます。
これが韓国語の場合、fanは팬、penは펜として変換されます。よく見てみましょう。韓国語では、[æ]という音はㅐが担当し、[e]という音はㅔが担当することになっているのです。ㅐ とㅔの発音が違っていた頃はこれで良かったのですが、後にㅐ とㅔの発音が同じになったため、韓国語話者は「同じ発音をㅐ とㅔ のどちらで書くべきか」という問題に悩まされることになりました。
元の単語の発音を考えれば、 ㅐ とㅔのどちらを用いるべきか、おおよそ判断ができるのですが、全ての韓国語話者がそのようにできるわけではありません。
また、多くの人の目に触れる広告などにも、本来書かれるべき表記とは違うものが使われることがあります。興味深いことに、間違われるときはㅐがㅔ に間違われるケースが圧倒的に多いです。実例を見てみましょう。

아이엠は決まってこのように書かれるようで、아이앰と書かれる例はほとんどありません。amとSamという単語の母音は同じなのに、아이엠はㅔで書かれ、샘はㅐで書かれている点も面白いですね。
日本語でこのような例を探す場合、「発音は同じで文字だけが区別される」という点で言うと、「ブ:ヴ」などが挙げられます。元の発音はbなのに「ヴ」を使って書かれることがよくありますが、「ヴ」を使うことでおしゃれな印象を与えようという意図が含まれるように思います。
韓国語外来語のㅔ の使用にも、 앨범より엘범の方が外来語っぽくてかっこいいという意識が働いているのかもしれません。

