カルト的な人気を集めた韓国作品をハリウッドでリメイクした映画『ブゴニア』

 90年代後半からの大きな変化の波を受け、00年代前半に「ルネッサンス」と呼ばれるほどの盛り上がりを見せた韓国映画界。この時代に作られた『엽기적인 그녀(猟奇的な彼女)』(01)、『올드 보이(オールドボーイ)』(03)といった映画はハリウッドでリメイクもされた。今回紹介する『ブゴニア』は、03年に登場しカルト的な人気を集めた『지구를 지켜라!(地球を守れ!)』を、奇抜な発想で知られるヨルゴス・ランティモス監督が現代的な解釈で再誕生させた作品だ。]

CEO誘拐から始まるサスペンス

Emma Stone stars as Michelle in director Yorgos Lanthimos’ BUGONIA, a Focus Features release. Credit: Atsushi Nishijima/Focus Features © 2025 All Rights Reserved.

 古い一軒家で従弟のドンと暮らしているテディ。製薬会社オークソリスの配送部署で働き、家では養蜂に打ち込む彼は、この世界の行末に大きな危機感を抱いていた。そんなある日、テディはドンと共にオークソリス社の女性CEOミシェル・フラーを誘拐する。彼女こそが「地球を滅ぼそうとする宇宙人」だと信じるテディは監禁したミシェルに、彼女がやってきた星の皇帝との会談を要求。一方、頭脳明晰なミシェルは巧みな話術で彼とドンの説得を試みる。

(L to R) Emma Stone as Michelle, Aidan Delbis as Don and Jesse Plemons as Teddy in director Yorgos Lanthimos’ BUGONIA, a Focus Features release. Credit: Atsushi Nishijima/Focus Features © 2025 All Rights Reserved.

オリジナル版との違いにも注目

(L to R) Aidan Delbis as Don and Jesse Plemons as Teddy in director Yorgos Lanthimos’ BUGONIA, a Focus Features release. Credit: Atsushi Nishijima/Focus Features © 2025 All Rights Reserved.

 봉준호(ポン・ジュノ)をはじめ、多くの監督を輩出した韓国映画アカデミー出身の장준환(チャン・ジュナン)監督のデビュー作として03年4月に韓国で公開された『地球を守れ!』。『살인의 추억(殺人の追憶)』、『オールドボーイ』、『실미도(シルミド/SILMIDO)』といった話題作が並んだ年ということもあって興行的には失敗したが、ユニークなキャラクターと奇想天外な展開で衝撃を与えた。その後、韓国映像資料院が設立50周年を記念して24年に発表した「韓国映画100選」にも選ばれるなど、名作としての地位を確固たるものとしている。

 そうした評価を受け、『地球を守れ!』を投資・配給したCJ ENMは、18年からリメイクプロジェクトをスタート。当初はチャン・ジュナン自ら監督するという案もあったそうだが、最終的にギリシャ出身で『哀れなるものたち』(23)などを手掛けたヨルゴス・ランティモスが演出を担当。オリジナル版では신하균(シン・ハギュン)演じる主人公と彼に好意を抱く女性というコンビだったのを従兄弟同士に、백윤식(ペク・ユンシク)が怪演した社長役を女性にするなど、様々な変更はありつつも、チャン・ジュナンの傑出したアイディアはそのまま生かされている。

Jesse Plemons stars as Teddy Gatz in director Yorgos Lanthimos’ BUGONIA, a Focus Features release. Credit: Atsushi Nishijima/Focus Features © 2025 All Rights Reserved.

エマ・ストーンのすばらしい演技

Emma Stone stars as Michelle in director Yorgos Lanthimos’ BUGONIA, a Focus Features release. Credit: Atsushi Nishijima/Focus Features © 2025 All Rights Reserved.

 ミシェル役は『哀れなるものたち』でアカデミー賞の主演女優賞に選ばれ、ランティモス監督とは5度目のタッグとなるエマ・ストーン。オリジナル版と同じく、(宇宙船との交信を防ぐため)丸坊主になる場面も含め、あり得ないような設定のキャラクターに説得力を与えるすばらしい演技を見せている。さらにテディ役に『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(24)のジェシー・プレモンス、ドン役にオーディションで選ばれたエイダン・デルビスが扮している。

 ランティモス監督はプレス資料のなかで「自分が確信していること、つまり特定の人たちに対して無意識のうちに下している判断が、本当に確かなのかと観客に問いかけたかった。この映画は、僕たちが生きている社会や、今の世界に存在している対立構造を、巧妙に反映していると思う」と語っている。その言葉通り、オリジナル版から20年以上を経た現在の世界は、驚くほどこの映画によく似ている。

Emma Stone stars as Michelle in director Yorgos Lanthimos’ BUGONIA, a Focus Features release. Credit: Atsushi Nishijima/Focus Features © 2025 All Rights Reserved.

原題:Bugonia
邦題:ブゴニア
公開:(韓国)2025年11月5日(日本)2026年2月13日
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、エイダン・デルビス、アリシア・シルヴァーストーン
©2025 FOCUS FEATURES LLC.

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