ハナタス読者の皆さんであればよくご存じの通り、外国語を学ぶことはわくわくする経験だ。今まで知らなかった文字が読めるようになり、その言葉を話す人たちと出会い、その言葉で作られたドラマや映画を楽しむ。まるで自分の周りの世界が広がったような気にさえなってくる。
ただし、そうした楽しさは、“自分の意思” でその言葉を学び始めたからこそ感じられるもの。もし、母語を奪われた上で外国語を強制的に「学べ」と言われたら、その“学習” は苦痛でしかないだろう。
『マルモイ ことばあつめ』は日本統治下で日本語を強要され、母語である朝鮮語の使用を禁じられていた人々が、言葉を守るために命を懸けて辞書作りに打ち込む姿を描いた歴史ドラマだ。
日本の植民地下、辞書作りに挑んだ人々の肖像
1941年の경성(京城)。中学に通う息子の授業料を用意するため見知らぬ男のかばんを盗んだ판수(パンス)は、そのかばんの持ち主정환(ジョンファン)が朝鮮語学会のメンバーで、仲間たちと辞書を作っていると知る。
ひょんなことから活動を手伝うことになったパンスは、彼らから文字を習い、少しずつ辞書作りの意味に気付く。

朝鮮王朝時代末期の言語学者주시경(周時経)の志を継ぐ朝鮮語研究者や教育者たちが集まり、つづり字の統一や朝鮮語辞典編さんといった事業を行っていた朝鮮語学会。
1942年から43年にかけては会員の33人が治安維持法違反で検挙投獄される「朝鮮語学会事件」が起きるなど、当局の弾圧を受けながら活動を続けた。
『マルモイ ことばあつめ』はこうした史実を基に作られたフィクションで、生きることに必死な平凡な人物の視点から、彼らの活動を追っていく。
『タクシー運転手 約束は海を越えて』の脚本家と俳優がタッグ

脚本を書き、監督を務めているのは『택시운전사(タクシー運転手 約束は海を越えて)』(17)の脚本家엄유나(オム・ユナ)。
同作で光州のタクシー運転手を演じた유해진(ユ・ヘジン)が主人公パンスに扮している。韓国で今年2月に公開された『왕과 사는 남자(王と生きる男)』(日本は来年1月公開予定)でも大成功を収めた彼が、息子を愛し、言葉の大切さに少しずつ気づいていく男を人間くさく演じている。
伝説的なボーイズグループg.o.d出身で、『범죄도시(犯罪都市)』(17)で残酷な犯罪者役を鮮烈に演じた윤계상(ユン・ゲサン)が、リーダーとして仲間を率いるジョンファンを好演している。
朝鮮総督府が行っていた皇民化政策の一端を知る

辞書を作ろうとする大人たちだけでなく、日本語や日本名を強要されながら中学校に通うパンスの息子の姿を通して、当時、朝鮮総督府が行っていた皇民化政策の一端も知ることができる。
私たちが日々、親しんでいる韓国語に対して、私たちの祖先がどんなことをしてきたのかということを、改めて考えさせられる。

原題:말모이
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邦題:マルモイ ことばあつめ
公開:(韓国)2019年1月9日、(日本)2020年7月10日
監督:オム・ユナ
出演: ユ・ヘジン、ユン・ゲサン、김홍파(キム・ホンパ)、우현(ウ・ヒョン)
配信:Netflix、Amazonプライム・ビデオ、U-NEXTほか
※最新の配信状況は各サービスにてご確認ください
公式ホームページ:https://marumoe.inter-film.com/
