韓国語の辞書を引くと、漢字語には漢字の注釈が付いており、固有語と区別されています。しかし、韓国語の単語の中には、もともと漢字語だった単語が大きく形を変えたものや、古い時代の漢字音が定着して固有語のようになってしまったものも存在します。
例えば、韓国語で「狩り」のことを사냥と言います。辞書を引くと、この単語には漢字が書かれていません。また単語の形も、いかにも固有語らしい見た目をしていますね。このことから、사냥は漢字とは関係のない固有語なのかと思いがちです。
しかし、この사냥という単語は、語源的に見ると「山行(산행)」という漢字語に由来することが分かっています。つまり、元は漢字語だったものが形を変えたということです。しかし、ここまで大きく形が変わってしまうと、辞書では「山行」という漢字を当てることが難しくなります。韓国語の場合、漢字は基本的に読み方が決まっており、漢字で表記するためには基本的にはその漢字の読み方に沿っていなければいけないので、固有語扱いにするしかないのです。

もう一つの例として、 먹 (墨)という単語があります。この単語も、辞書では漢字が書かれていません。また、「墨」という字の漢字音は묵です(例:水墨画→수묵화)。このことから、 먹という単語は漢字の「墨」とは関係のない固有語に見えます。
しかし、この먹という単語は、語源的に見ると「墨」という漢字の古い漢字音に由来することが分かっています。古い漢字音というのは、古い中国語のことです。今、一般的に韓国の漢字音として扱われる読み方は、ある時期の中国語の音が大量に入ってきて定着したものですが、実際にはそれよりも前から中国との交流があり、漢字の読み方が伝わっていたということを意味しています。
さて、사냥や먹などの例は、他にも挙げられます。以下に、あと1例挙げましょう。形が大きく変わった例として김치があります。この単語はもともと「沈菜」という漢字語で、팀채から딤채、짐채、짐치という変化を経ました。ここから김치になったのは大きな変化に見えますが、これには、慶尚道などに見られる発音が関わっていると考えられます。
慶尚道周辺の方言では、길という単語が질になるなど、기が지になる音韻変化(口蓋音化現象の一種)が起きており、それは話している人たち自身も分かっていました。そのため、「自分たちが지と発音している単語は、標準語では기なのだから直そう」と考え、自主的に訂正していたのです。この訂正が、本来なら訂正をしなくてもよい짐치にまで及び、김치という形で定着するに至りました。

このように、本来なら訂正しなくてもいいところまで標準的な形に訂正しようとすることを、過剰修正と呼びます。김치はこの過剰修正によって、元の漢字語からかなり離れた形に変わった例です。
このように、辞書では漢字の注釈がなく固有語とされていても、その中にはいろいろな漢字語が潜んでいることが分かります。一方で、どう見ても漢字語にしか見えないという単語が固有語であると判明することも少なくありません。語源に興味がある方は、いろいろと調べてみると、面白いことが分かるかもしれません。

