韓国語には、相手への敬意を表すときに使う-시-という語尾があります。この-시-は、日本語の敬語で言うところの「尊敬語」を表す機能を持っています。尊敬語は、動作を行う人のことを高める表現方法ですから、基本的には文の主語になっている人に対する尊敬を表します。
친구가 왔어요.
友達が来ました。
선생님이 오셨어요.
先生がいらっしゃいました。
この場合、오다 (来る)という動作をしているのは친구と선생님ですが、선생님に対しては尊敬語を使うので、오다に-시-を付けています。尊敬語というのは、話している目の前の相手ではなく、話に出てくる人に対する敬意を表すので、例えば友達同士でパンマルを使いながら話に出てくる先生に対して敬語を使うことができます。
선생님 언제 오셔?
先生はいついらっしゃる?
このように、話に出てくる人に対する敬語のことを、「素材敬語」と呼びます。それに対して、目の前にいる人に対する敬語のことを「対者敬語」と呼び、日本語の「です・ます」や韓国語の합니다体、해요体などの待遇法がこれに当たります。上の오셔?の例では、素材敬語を使っていますが、対者敬語は使わず、パンマル(해体)になっています。
さて、-시-はこのように原則として素材敬語を表す語尾ですが、しかし最近の韓国語ではこれに変化が出てきています。すなわち、-시-を対者敬語として使う用法が出現し始めているのです。例えば、このような例です。
손님, 커피 나오셨습니다.
お気付きでしょうか。-시-は素材敬語ですから、本来の-시-の用法であれば、この文はコーヒーに対して敬語を使っていることになってしまいます。つまり、「コーヒーが出来上がられました」という、少し不自然な意味になってしまいます。しかしこれは、話し相手である손님(お客様)に対して敬意を表そうとしているものです。つまり、-시-を対者敬語として使っているのです。
上の例文を学校的に「正しい」韓国語に直すのなら、손님, 커피 나왔습니다 (お客様、コーヒーが出来上がりました)とすれば十分です。しかし、これだとどこか敬意が足りないように感じられるのでしょう。近年の若い世代では、-시-を追加することで話し相手に対する丁寧さをよりはっきり表そうとする言い方が目立つようになってきました。他にもいくつか、こうした例を挙げておきましょう。
손님, 이건 환불이 안 되세요.
お客様、こちら払い戻しはできません。
이 시간엔 붐비지 않으실 텐데요.
この時間は混んでいないはずですよ。

