韓国の時代劇を見ていると、現代を舞台にしたドラマとは使われる言葉が少し違うことに気付くと思います。今回は、時代劇のセリフによく使われる古い韓国語について見てみましょう。
韓国時代劇で聞く「-옵니다」と「-옵나이다」
例えば、王に臣下が感謝の言葉を述べるとき、こんな言葉を使います。

망극하다は「(受けた恩が)限りなく多い」という意味の形容詞で、この単語も日常会話では普通使いませんが、ここでは語尾の方に注目してみます。
망극하옵니다は、語幹の망극하-と、語尾の-옵니다に分けることができます。-옵니다は現代の-ᆸ니다のご先祖様に当たります。形が少し似ていますよね。さらに古い形になると-옵나이다となり、これも時代劇で使われることがあります。
「-옵-」の意味は?自分を下げる謙譲の語尾
-옵니다の古い形である-옵나이다をさらに細かく分けてみます。すると、- 옵 -という要素と-나이다という要素に分かれます。
– 옵 -は昔の韓国語で謙譲の意味を表していた語尾で、目上の人に対して自分のことを下げながら言う場合に使っていました。- 옵 -が子音語幹に付くときは-삽-または-사옵-という形になる決まりでしたが、この-삽(사옵)-がさらに変化して、現代の- 습니다の- 습 -になっています。
「-옵-」が「-오-」になる理由|황송하오나の例
– 옵 -が使われる他の表現を見てみましょう。臣下が王に進言するときの表現です。

まず、아뢰다 (申し上げる)に- 옵 -が使われているのが分かると思います。目上に対して行う行為なので、- 옵 -を付けているわけですね。
そしてこの表現にはもう一つ- 옵 -が使われています。それは、황송하오나の- 오 -です。
– 옵 -はその後ろに- 나이다など別の語尾を付けて使いますが、語尾の種類によって用言語幹と同じく活用をします。
ここでは後ろに-( 으)나が付いているのですが、- 옵으나ではなく-오나となります。これは、- 옵 -がㅂ変則活用(の古いタイプ)をする語尾であるためです。~하오나の他にも、~하오니などの形があります。
現代の「-ㅂ니다・-습니다」に残る「-옵-」の名残
時代が下るにつれて- 옵 -が持つ謙譲の意味は薄れ、常に- 옵 -を付けて- 옵나이다、-옵니다と言うようになり、最終的に化石化して-ㅂ니다の-ㅂ -に残りました。
たまに学習者の方から「いつも鼻音化して[ㅁ]になってしまうのに、どうしてㅂ と書くのか」という声を聞きますが、実は- 옵 -に由来する語尾は他の場所にも残っていて、語源を考慮し統一的に書くためにㅂを残しています。
-ㅂ디다 (~していました)では鼻音化しない[ㅂ]の音が残っていますし、またㅂ変則活用した形である~하오니(~しますので)は現在でも案内放送などでよく使われます。~할 수 있사오니…のような表現を聞いたことはないでしょうか。実はこれらは全て、同じ一つの語尾から来ているのです。

